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人口が増え続けた軍艦島では、島で生活するために高層集合住宅が建設されました。中でも島の最南端に位置する30号棟は、日本最初の鉄筋コンクリート造アパートが現存しています。
1916年、軍艦島には日本最古の鉄筋コンクリート(RC)造のアパート「30号棟」が建設されました。グラバー邸のトーマス・ブレーク・グラバーと関わりがある説から、通称「グラバーハウス」と呼ばれています。当初は4階建てでしたが、増築されて7階建てに。当時では非常に大きな建物でした。
30号棟は、RC造7階、一部半地下の集合住宅。外観からは立方体に見えますが、実際はロの字型。内部に吹き抜けの空間があり、空間の周辺を回るように階段が設置されています。
階段は、階段室がなく直接屋上につながっています。30号棟の立つ外洋側南西部は、船で言う「ブリッジ」の場所にあたり、海が荒れると、最も激しい風雨や波が打ちつける場所。そのため、雨が降ると階段を伝って雨水が階段へ降り注いだと言います。
屋上には、中央吹き抜けの周囲の突起はかまどの煙突、外周に立つ細めの突起は手摺り用の柱が造られます。戦時中は、速射砲が設けられました。
建物の鉄筋には、炭鉱施設の廃材でもある巻揚機用のワイヤーロープやトロッコ用のレールなどが転用されている部分が多いことが特徴。
また、コンクリートに混ざる砂を対岸の高浜から調達したため、壁面の剝落した部分には、至るところに貝殻が埋まっています。
間取りは、六畳一間に台所がついた1Kと四畳一間の1Kと共同トイレがありました。室内には、かまど、流しの他に押入れと出窓しかなく、窮屈に感じます。
30号棟には、下請けの職員のために商店や食堂も入居。操業時は「組」と呼ばれた下請け会社のまかない食堂に使われる部屋も数多くありました。唯一、賃金の支払窓口は誰もが利用でき、給料日には仕事帰りに真っ先に受け取ることができたと言います。
海の状況や悪天候で上陸できないことも多い中、平均上陸率94.7%(※)と高い上陸率を誇る軍艦島コンシェルジュさん協力のもと、軍艦島の上陸ツアーに参加したレポートを紹介しています。ツアーの見どころはもちろん、軍艦島の魅力を余すところなくお届けします!
※平成23年度~平成30年度の上陸実績